大浦海岸通りに面して建つ、どっしりとした赤レンガ造り2階建ての「旧長崎英国領事館」。上海の英国人技師ウィリアム・コーワンの設計に基づいて、1907年に長崎市大浦町の後藤亀太郎が施工し、翌年完成しました。
1858年、諸外国との修好通商条約が結ばれた後、長崎は開港場として自由貿易を開始し、外交事務が始められ、領事館を設置することになりました。長崎の英国領事館は数回移転しており、1886年から1906年まで現在地にあった建物を使用していましたが、老朽化のため解体し、翌年より現在の建物の工事が開始されたのです。
主屋は煉瓦造の2階建てで、1・2階ともに正面・両側面の3面にベランダを配置。両端の外壁にあけられた丸窓や、1階両側壁面やアーチ部分に花崗岩を入れてアクセントをつけるなど、正面性を意識したデザインがなされています。
建築当初からの本館・附属屋・職員住宅をはじめ、門・塀にいたるまで敷地全体にわたり、建築当時の状態をよく保っているとともに、設計図や仕様書なども残されています。明治後半期の洋風建築として、造形・意匠の面からも、歴史上・景観上貴重。加えて、近代日本外交史の一端を示す資料としても高い価値を持ち、1990年国の重要文化財に指定されました。
老朽化が進み、現在保存修理工事中のため2025年度(予定)まで閉館しています。